めっき技術、特にバレルめっき加工のスペシャリスト。
技能検定の電気めっき作業検定委員や、大阪高等めっき技術訓練校講師として2003年まで技術指導と講議を担当。
2004年大阪市より「大阪テクノマスター」に認定。
国光鍍金株式会社 オフィシャルサイト
http://www.kokkom.co.jp/
一般的なラック掛け法と違い、より精密な部品へのめっき加工で自社の独自性を打ち出す
ひとことでめっきと言っても、その用途、製品は多岐にわたる。ネジや部品類から始まり、ボタンなどのアパレル製品・アクセサリーなどの装飾品など、それぞれに適した方法や技能が異なる。「特にカメラなどの中にある直径1mm前後の精密ネジや、古美色めっきで風合いを出したアクセサリーなどで、バレルめっきの技術が役立ちます」バレルとは樽を意味し、めっき液が入った浴槽の中で製品を入れた樽を回転させてめっきを施す方法。コストが低く、ラック掛け法では困難な細かい部位でもめっきが施せる反面、技能が品質にストレートに現れる。溶液の配合やバレルの大きさ、回転速度など試行錯誤の連続で培った技術は「バレルめっきなら国光鍍金へ」と言えるまでの独自性につながっている。18歳からめっき一筋で研究を重ねてきた寺内氏の技術の結晶だ。
技術の研鑚を重ね、アジア諸国でも技術指導を行うまでに
JETORO( 日本貿易振興機構 )の要請で、中国やフィリピンに、めっきの技術指導に赴くこともある。ここで心掛けているのが、進んだ技術をただ押し付けるのではなく、その場所にあったやり方で方法を見出していくこと。「基本はその国の資源を最大限に活用すること。例えば、フィリピンには、ヤシの木がたくさん自生する。ヤシの実の殻(活性炭)は有機不純物の除去に有効である。また、珊瑚礁地帯であるので、石灰が豊富に産出する。それらを利用する方法を現地スタッフと共に考えるんです。高価な機械を買って渡してそれで済まそうとしても、機械を使える者がいなければ、結局技術は定着しないと考えています。」その姿勢が受け入れられ、『次の技術指導にも、是非Mr.テラウチに来て欲しい』と現地の技術者から指名がかかったり、二度目以降の訪問ではどこでも歓迎を受ける。子ブタの丸焼きで歓待され、有り難いながらも閉口した経験もあるとか。モノがないから発達した技術もある。技術指導に行っても、こちらが教わる事、勉強になる事も多いんです」謙虚な人柄とものづくりに対する情熱は、国境を超えて伝わっている。
環境への高い意識を持ち続け、情報の共有を常に怠りなく行う
技術訓練校ではめっき技術のみではなく、環境に関しての講議を担当している。「めっき業は薬品類もたくさん使うし、河川や下水への廃棄処理など、環境に関する知識が不可欠。めっきについての対外イメージを悪化させないためにも地域周辺へ環境意識が高くないといけない。条例や法令について把握しておくのはもちろん、組合で常に情報共有し、状況を共有しておくのが重要です」 また、工場内を見学させて頂いてまず感じたのが、従業員の方々の礼儀の正しさ。作業の邪魔をしてしまっているのにも関わらず、全員が「お疲れ様です」と挨拶をしてくれる。「周辺への環境保全と共に、職場での環境にも気を配っています。女性にとっても働きやすい職場を目指して、例えば、重いものでも運びやすい包装単位にする。3Kなどとひと昔前に言われていたような職場にはしたくない」聞けば、週休2日制を地域でもいち早く取り入れたとのこと。社員教育の徹底と、社内環境の充実。経営者としても高い意識で取り組んでいる事がうかがえる。
「みんなが『いい街にしよう』という気概がある。道徳的なプライド が高い街」
生野で育ち、働き、住まいも生野という寺内氏。生野に対しての愛着がうかがえる一言だ。「外から見ると、ガラが悪いとかそういうイメージがありますし、実際そんな事を言われる事も多いです。でも、だからこそ、そう言われないように意識している人も多い。マナーや地域の働きに関しても、住民がいい意味でプライドを持って取り組んでいると思います」そのプライドは、そのままものづくりに対するプライドにもつながっている。「製造業は日本の強み。ものづくりを大切に、生野の若い人にはもっともっと儲けてもらいたいと思う。基本を大切にしつつ、独自の考え方で工夫していけば、中国に逃げている生産も日本独自の技術として取り戻せるはず」そう語る寺内氏、仕事が休みの日も生野で過ごす事が多いという。近所のスーパーで奥様と買い物をしたり、自宅でガーデニングを楽しむ姿がしばしば見かけられる。