生野の財産

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株式会社ベルパック

代表取締役社長 柳澤昭男さん

昭和28年、活版印刷機械の設計製作を生野区で始める。

以来、印刷物の帯かけ包装機械や印刷物自動検査計数機の設計・開発を自ら 行い、商品化。

昭和56年、大阪府知事より発明実地功労賞を受賞。

翌57年、自走帯封機の特別装置に関し、科学技術庁長官より注目発明に選定され、注目発明選定証を受賞。

株式会社ベルパック オフィシャルサイト
http://www.belpac.co.jp/

初めての発明は18歳のとき

図面も設計図もなしの「見習いの見覚え」から始まった新しいスタイル

父である先代について旋盤工の修行を始めたのは10代の頃。以来、40年以上もの永きに わたり印刷機械について考え続けたひと、それが柳澤氏である。元々は印刷機械そのものではなく、その部品加工業がメインであった柳澤氏が、思い立ってモー ターで 動く活版印刷の機械を初めて作ったのが18歳の頃。設計図も無しで鋳物を買ってきて組み立てたというのだからすごい。まるでプラモデルでも作るような感覚 だ。当時としては画期的なスピードと形で、1号機は13万5000円で売れた。大学卒の初任給が月4000円という時代。18歳の発明は、会社の未来を 担っていくこととなる。 その後も日夜改良を重ね、ほぼ1.5年に1モデルの割合で、新しい技術を取り入れた改良版を開発していく。先代には当初なかなか「機械の設計・開発」とい う手順が理解してもらえず、柳澤氏が図面をひいていると「仕事せー!」とよく怒られたという。怒られながらも、柳澤氏が常に考え続けていたのは「いかに人 が作っていないものを 作るか、いかに効率的に仕事が出来るものが作れるか」ということであった。手や体を動かすことが職人としてのメインの仕事というのが常識だった時代に、頭 でまず考えて、計画する。今では当たり前のスタイルかも知れないが、それをものづくりの現場にいち早く取り入れたところが、成功の第一歩だった。

受注生産で引っ張りだこに

作るものに自信があるから貫ける姿勢

現在の社名のもとになった印刷物を自動で帯掛けする機械(=ベルトパッケージ)の第一号 機が完成したのは昭和45年。以降、地元の印刷業者のみではなく、東京の大手印刷会社や大手メーカーがクライアントとして加わることになる。例えば魚肉 ソー セージを束にする機械や蚊取りマットを束ねる帯の印刷と帯掛けを行う機械など受注生産に特化していく。 依頼を受けた工場に出向き、機械の設計者としてだけではなく、経営者の立場からもイマジネーションを具現化していく。例えば、ある工場ではコンベアのライ ンを、作業する人の配置が縦一列になるように設計した。その結果、私語が無くなり作業効率がよくなった。単に発注者の求める機械をつくるのではなく、作業 能率も含め、工場全体の生産性の向上までも視野に入れた設計だ。柳澤氏が「作ったもので売れないものはなかった」と語るのもうなずける。「成功の秘訣 は・・・強いて言えば、印刷業界から離れなかったことでしょうか」発想は柔軟に、しかし商売のやり方は一本筋が通っている。

ものづくりを楽しみ続けること

2005年ロボカップ出場。「来年も是非出たいですね」

ロボカップとは、ロボット工学と人工知能の発展のために、日本の研究者 らによって提唱された国際プロジェクト。1992年の発足以来、世界大会も第9回目を迎える。「西暦2050年には、サッカーの世界チャンピオンに勝てる自律型ロボット (ラジコンでなく自分で考えて動くロボット)チームを作る」という壮大な目標を掲げる「ロボカップ・サッカー」の大会は、人間のサッカーと同じように競技会形式で 行わる。最近では、研究者のみならずロボット愛好家や一般のサッカーファンからも熱い注目を浴びている。2005年の世界大会の開催地は大阪。 この「ロボカップ・サッカー」に今年、柳澤氏の属する機械組合チームも参戦を果たした。 結果は・・・「予選敗退で散々でした(笑)でも、是非来年も挑戦したい」と少年の様に瞳をキラキラさせる柳澤氏。仕事も「金儲けではなく、つくるのがが単純に楽しく てここまで来たんです」これからは介護ロボットなども作ってみたい、とものづくりへの尽きることのない夢を語る姿が印象的である。

この町ではぐくんできたもの

「サンダルで買い物に行けるような気軽さが生野の魅力」

昭和7年に生まれてからずっと、小学生のとき学童疎開をしていた時期以外は生野区に暮ら している柳澤氏。氏は、生野区の魅力を「中小企業には仕事のしやすい、気さくな街」と語る。確かにつっかけサンダルのまま買い物に行けるような気軽さや、 今でもご近所づきあいの盛んなフランクな街、という印象は一般的にも生野の抱かれているイメージの一面である。 しかし、「他の人に迷惑はかけたくない、ご近所にもきちんとするように気を付けています。普段から商売以外のところで気を配っているから、注目発明選定な どの賞が もらえるのだと思ってます」との一言も。例えば、搬入出時につきものの大型車の駐車についても、近所の迷惑にならないよう十分にスペースを確保しているの だという。 謙虚な氏の一面がここにも垣間見える。